夕日

セロトニンの不調

ある程度の進化を遂げた地球上の生命体、特に「動物」と言われている種類の生命体の構造は、複雑そうに見えて単純である。
もちろん、指先の動きの精緻さとか、体内を走る血管の配線具合とか、そのあたりのことは繊細微妙に出来ており、生命の神秘と言えるような奇跡的なカタチをしているのが分かる。
しかし、基本的な構造は至極単純である。つまり、脳がひとつあり、それに応える諸器官が身体を形作っているという基本的な構造は。

脳はさまざまな命令を出し、その結果を確認し、動物の身体を動かしている。例えば人間がドアを開け、鍵をかけ、ドアに背を向けて外に出るという一連の行動は、意識的なことも無意識的なことも、すべて脳の命令によって行われている。
例えば脳は、「ドアを開けろ」と命令し、ドアが開いたことを視覚などで確認したら、「足を前に運んでドアの外に出て、それからドアを閉めろ」という命令を出す。
命令と確認。それが繰り返される。しかし、なぜか「鍵をかけろ」という命令のあと、確認が上手くいかなくなる。それがすべての歯車をくるわせてしまう。
ドアは閉めた。鍵は……どうだろう?上手く確認できないのである。

強迫性障害は、この、「ある行動についての確認伝達が上手く行われないこと」が原因であると言われている。具体的には、セロトニンという「伝達物質」が、上手く働かないために強迫性障害が起きるのだと言われている。
セロトニンによって、ドアが閉まったこと、鍵がかけられたことが上手く伝達されず、何度も確認しなければならなくなる。
あるいは、手を洗ったことを確認することが出来ず、何度もゴシゴシと……ということである。

ここまで、強迫性障害のメカニズムは明らかになっているのである。当然ながら、原因が分かっているのだから、それに対してどのような手段を講じるべきかという研究もなされてきた。
治療法も、考えられてきたのである。